Blog

記事・ブログ

将来医療法人にするならクリニック開業前に気をつけておきたいこと

2021.07.12
将来医療法人にするならクリニック開業前に気をつけておきたいこと

1 医療法人にするかどうかは決めていないけど

将来医療法人にするかはまだ全然決めてないけど。

でも絶対しない。とは言い切れない。

①東京都内にクリニックを開業する
②これから開業融資をつける
③これからクリニック物件の賃貸借契約を締結する

の、3つを満たす、これから開業を考えるドクターのみなさん。

今回ご紹介する話は、東京都で開業し、東京都で医療法人を設立する際に関するお話です。

「医療法人にするかどうかは決めていないけど」と前置きしたのは、これからお話することが、

●開業融資の前
●クリニック物件の賃貸借契約を締結する前

でないと回避できないことだからです。

と、いうことは医療法人にするかどうかよりもっと以前の、クリニック開業準備の段階で実は医療法人化するときにおさえておきたい重要なポイントがあるということです。

そのポイントは、

●設備を買うときは融資実行日後に支払う
●賃貸借契約の際に将来の医療法人化に備えて根回しをしておく

の2つです。

2 設備を買うときは設備融資実行日後に支払う

まず、「設備を買うときは融資実行日後に支払う」、この理由について説明します。

医療法人を設立するとき、個人名義の借入金を法人化したあともクリニックの収支で出た利益で返済をできるよう個人名義の借入金を医療法人に引き継ぐことができます。

その際、引継ぎができるのは「設備資金」に限定されます。

この設備資金とは東京都のルールだと、購入時に資産として貸借対照表に計上されたものが原則該当します。

そのため単価30万円未満の少額資産等で会計処理されたものは該当しません。

よって単価30万円超の医療機器や、内装工事代、そのほか賃貸の場合の保証金などが該当します。

例えば設備資金として1,000万円借りて、医療機器に1,000万円使っていて、医療法人化するときの借入残高が500万円だったらその残高500万円を医療法人名義に借入金として引き継いで医療法人で残りの期間は返済していくことになります。

ここでこの1,000万円の支出するタイミングが融資実行後であることが前提です。

どういうことか?

例えば自己資金で1,000万円持っていて、融資実行が予定より遅れてしまった。

期日までに支払いをしないと購入権利がなくなってしまう。

といった場合に、個人で立て替えて、融資実行後に立替分を精算するので金融機関もOKした場合。

東京都のルールでは「アウト」です。

すなわち、上記500万円は医療法人に引き継げず個人に残ることになります。

医療機器だと考えにくいですが、保証金とかだと結構ありがちです。

これは融資実行日と支払い期日が分かる書類を東京都に提出しないといけないので、虚偽の日付で書類を用意するでもしない限り回避することができません。

個人の借入金が医療法人に引き継げないとどんなデメリットがあるのか。

これ以外にそもそも借入金に関して注意するべきことは過去に誰も教えてくれない医療法人化したあとの財務バランスという記事を書いたので参考にしてください。

自己資金でいったん立替える、金融機関がその後立替え分まで含めて融資をつけてくれるのであれば一見問題なさそうですよね?

将来医療法人という選択が全くないと断言できるのであればもちろん問題ありません。

ただ、選択肢は多いほうが何事においてもいいですし、知っておくことで回避できる問題でもあります。

3 賃貸借契約の際に将来の医療法人化に備えて根回しをしておく

次に「賃貸借契約の際に将来の医療法人化に備えて根回しをしておく」についてお話しします。

クリニック物件の賃貸借契約の際に気をつけておきたいことになりますので、ビル診での開業ケースを想定しております。

個人から医療法人になるとき、東京都では医療法人化したあとも、

●同じ場所

患者さんが安心して法人化後も継続的に通える。

●同じ条件

主に賃料と契約期間。
法人化の際に、現在の実績をベースに法人化したあとの経営状況の予測である予算書を作成します。
そのため将来賃料が大幅に値上げするなどして、根拠になる現在の実績をベースにした予算書がアテにならなくなるのを防ぐ目的。

で、契約を継続できることをオーナーに証明してもらう旨の「覚書」の提出があります。

この覚書きは上記2点を満たすため基本今の契約内容そのまま、契約名義を法人化後は個人名から医療法人名に変更するといった内容です。

ここで今回のポイントです。

題名の通り、開業時点で将来医療法人化するなんて決めてないけど。

一番最初の契約の際に、

〇法人化の際の協力についても交渉しておくといざ法人化のときにスムーズ

実はこの覚書ですが、東京都の雛形というものが存在し、この雛形で作成して貸主と東京都に内容のO.K.もらって押印することになります。

これ、東京都の押印指示があってから押印することになり、だいたい指示から期限までが1~2週間くらいとタイトなスケジュールになります。

そうすると貸主が規模の大きい会社の場合、社内の稟議通すだけで結構時間かかることがあります。

また、東京都の場合、マスターリースなど実際の物件所有者と貸主が違うなど、契約上登場人物が多い物件もめずらしくありません。

開業して経営が軌道に乗りいざ法人化に向けて東京都に申請するぞ!と、なったとき、「医療法人にするのでこの覚書きに印鑑を押してください」と、依頼してみたものの。

まず、仲介の不動産会社さんを通して、オーナーさんに説明があって、そもそもその不動産会社さんがあまり理解してくれなくて何度も伝言ゲームを繰り返し、「1週間で押印するなんて無理です」となるのは避けたい事態です。

そうなると、開業時の契約の際に事前に将来の法人化について「そのときが来たら協力してほしい」と打診しておくことでまず先方の反応も見られますし、仮に詳しい説明を求められたときも直近での時間の制約がないので十分な理解を得た上で将来に備えることができます。

〇名義書換料1回目は無料の契約にしてもらう

次に、上記の通り医療法人になるときは契約名義が個人から法人に変更になります。

これ、通常の契約更新とは別のタイミングで発生することがほとんどなので、名義変更の際には「名義書換料」等が発生するケースがあります。

その際に1回目だけは無料にしてくれませんか?

と、お願い又は覚書きの場合も名義書換に該当するのか確認をしてみてください。

4 最後に

さて、この2つの話、ご存知ない方も多かったかと思います。

医療法人については税務上のメリット・デメリットに触れた話は多く情報として出ていますが、こうした実際の手続きにおける注意点などの情報発信はまだあまり一般的ではないかもしれません。

ビーワンクリニックの開業支援では、一般的な開業支援が網羅できることはもちろん、こうした専門特化だからこそのアドバイスも大切にしています。